AQHAプロライダーが語る「だからウエスタン乗馬はやめられない」

ウエスタン乗馬に関わるカルチャーやアイテムは、当時のカウボーイたちが牧場での作業や生活において工夫し、こだわり抜いて生み出されたものが多い。とはいえ、古いものばかりを尊重するのではなく、新しいものを取り入れる柔軟さも持ち合わせている。現に、今もなお着々と変化を続けているのだ。そんな素晴らしい歴史と文化に思いを馳せながら、クォーターホースの背に乗り、ウエスタンファッションを楽しみ、時にはお酒を飲みながらカントリーダンスを踊り、カントリー音楽をBGMに大好きな馬の話で盛り上がる……。こんな楽しみ方ができるのだから、もうやめられない。

ウエスタンが世界に普及したきっかけ

クォーターホースがいたからこそ

ウエスタン乗馬といえば、クォーターホース(アメリカン・クォーターホース)。クォーターホースは17世紀初頭、イギリスやスペインから北米大陸に持ち込まれた馬を交配し作られた品種とされている。交配される馬としては、サラブレッド、アラブ、マスタング、スペイン馬、アンダルシアなどが有名である。それらの品種を、畜産業に従事していた労働者――現在でいうカウボーイが交配した。さまざまな馬の中でも、特に頭のよい品種となったのではないか。


晴れた日は馬たちと散歩に出かける

牧場のオーナーたちは、おそらく以下のようなやりとりをしたと思う。

「最近、牛が多すぎて管理が難しいなあ」
「そうだな、牛は牛同士を引き離すことが難しいから」
「牛は動きが速すぎて、捕まえ切れん」
「馬を使おうにも、一度走り出したら止まりゃせんしな」
「俺は小さいから、あんな大きな馬は乗りこなせんよ」

そんな話を聞いた牧場の労働者は、オーナーに提案した。

「そうだ、馬を改良してみましょう。僕たちは馬に乗って作業をする。馬をもっと賢く俊敏に、小さくするのです。」
「そんなことできるのか?」
「分かりません……でも、やってみる価値はあると思います!」

そして数年後。

「馬ができました。私がつくった最高の馬です!」
「小さいが、体はしっかりしているな」
「この馬は、4分の1マイル(約400m)を非常に速く走ることができます。しかも瞬時に止まって、方向転換をすることもできます」
「それは素晴らしい。早速乗ってみよう」
「はい!」

と、このような会話があったかどうかは分からないが、当時のカウボーイが自身の作業用として開発した、というのが通説だ。その他にも、「いろいろな交配をして偶然できた」「カウボーイではなく、研究者が開発した」「生産者が自ら開発した」など諸説あるようだが、私はカウボーイが雇主のために頑張り、その成果がクォーターホースであると信じたい。

現在では、アメリカン・クォーターホース・アソシエーション(American Quarter Horse Association / AQHA)がクォーターホースの血統書管理と世界中の競技記録を管理し、普及する活動をしている。およそ100万頭のクォーターホースが登録されており、ウエスタン競技人口は40万人あまり。アマチュアからプロまで、この馬をパートナーに活躍中だ。私自身、今年はAQHA主催のオープンクラスで活躍できたらと思っている。

カウボーイの必需品

Western Shirt【ウエスタンシャツ】


ポケットに「シンチ(CINCH)」のロゴが入ったシャツ。本場ではプレーンなデザインのものが主流

毎年、流行がある。ロディオマン、カウボーイ、ホースマン、ダンス愛好家、カントリー音楽など、デザインは職業によって大きく異なる。日本におけるウエスタンシャツのイメージは、肩や胸に刺繍が入ったものや、フリンジがついたものだろう。しかし本場ではプレーンなシャツが多く、無地やチェックが主流である。最近は調教時や乗馬の練習中、ウエスタンシャツではなくポロシャツがよく着られているようだ。実際、私自身もポロシャツを着て馬のトレーニングをしている。流行やブランドはさまざまだが、「シンチ(CINCH)」「ラングラー20エックス(WRANGLER 20X)」が定番。一部では「ラルフローレン」や「トミーヒルフィガー」なども流行っている。私愛用のシャツは「シンチ(CINCH)」。ちなみに新しいシャツや洋服を買った際についてくる小さな布、あれは何だかご存じだろうか。おそらく多くの方が、破れたり傷んだ衣類を補修するために使うものだとお考えでは?しかし、それは間違い。実はあの小さな布切れは、洗濯時に記事が小さく縮まないか。色落ちしないかを試すものだ。ウンチクをもう一つ。シャツの背中側中央部に、輪っかがついているものがある。あれは「ハンガーループ」といい、シャツを壁にかけるためのものだ。だが現代では、型崩れを起こすのでほとんど使われていない。ほぼ装飾のみの役割となっている。

Jeans【ジーンズ】


ポケットの上部にある小さなポケット。リベットでしっかりと留められている。

大半のウエスタンライダーは「ラングラー(WRANGLER)」シリーズのジーンズを愛用している。近年では、「シンチ(CINCH)」も流行しているようだ(私の愛用しているジーンズも「シンチ(CINCH)」)ジーンズは約150年前に誕生した。農作業や馬乗りでも生地が破れないよう、テント用の丈夫な布を使用したのが始まりだ。インディゴ染料を用いたのは、害虫に強いからといわれている。ジーンズのポケットの上部についている小さなポケットは、いったい何を入れるためのものか考えたことがあるだろうか。この小さなポケットを初めてつけたのは、1857年製のリーバイス。当時、だれもが携帯していた懐中時計を入れるのが目的だった。今ではどんな使い方が主流なのだろうか。私はよくここに、親指を引っかけている。ジーンズに使われている留め金は、「リベット」という。特にポケットの部分には幾重もの生地が重なり合っている為、ポケットに手や物を出し入れするたびに負荷がかかる。そこで、縫い目が切れたりほつれたりしないよう、リベットでしっかりと留めているわけだ。リベットはこうした実用性だけでなく、デザインのポイントにもなっている。

Western Boots【ウエスタンブーツ】


愛用中の「RIOS」のブーツ。スパー(拍車)を引っかけるため、ヒールは真っすぐ。

ウエスタンブーツには、大きく分けて2種類ある。「ウエスタンスタイル」と「ローバースタイル」だ。ウエスタンスタイルのブーツは、主にウエスタンダンスやカントリーミュージックなど、娯楽分野で活躍するブーツである。ヒールの部分が斜めにカットされているのが目印だ。足がすらっと細く見えるので、ダンスを踊ったり、カントリーミュージックを演奏する際の見栄えがいい。ローパースタイルのブーツは、ロディオマン、カウボーイ、ホースマンなどに愛用されている。スパー(拍車)を引っかけるため、ヒール部分がストレートになっているのが特徴だ。ウエスタンブーツは牛の革で作られたものがほとんどだが、中にはヘビ革やクロコダイル、サメ、オーストリッチ製などもある。ただし、近年はワシントン条約によって輸出入が規制された皮革製品も少なくない。国外に出れば、日本では手に入らないレアなブーツに出あえることもあるだろう。ウエスタンブーツのブランドには、「TONY-LAMA」「JUSTIN・ARIAT」「AUDERSON BEAN」「LUCCHESE」「RIOS」などが有名である。私は「RIOS」のオーストリッチのブーツを愛用している。

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